水分の補給

2007.8.14.

冬練三九、夏練三伏。
冬天増力、夏天増気。

これは中国で伝えられてきた言葉です。
「三九(さんきゅう)」とは冬の最も寒い時期を表し、「三伏(さんぷく)」とは夏の最も暑い時期を表します。
1行目は「冬はあえて三九の時期を選んで練習し、夏はあえて三伏の時期を選んで練習せよ」という意味です。
2行目は「冬の練習は体力を付けさせ、夏の練習は気力を充実させる」という意味です。

日本にも「寒稽古(かんげいこ)」という言葉があります。練習しづらい時期にあえて稽古をするということに意義があるわけです。
ただし、寒い時期には十分にウォームアップすることが必要ですし、暑い時期には水分の補給が欠かせません。

私が子供の頃には、「運動中に水分を取ってはいけない」と言われました。
(あなたもそうですか?)

今では、運動中の水分補給は当たり前のことです。
サッカー選手はプレーが中断する都度に水(おそらくはスポンサー提供のスポーツドリンク)を飲んでいます。バレーボールの選手もバスケットの選手もそうです。テニスも野球も。マラソンでは給水ポイントでドリンクが飲めるか飲めないかが勝敗を左右しかねない要素となっています。

「運動中の水分摂取を極端に制限すると、特に暑熱環境では体内の水分量の減少によって体温調節能力が損なわれ、その結果、体温の上昇が進んで熱中症などを引き起こす危険性が高まります」(『勝ちにいくスポーツ生理学』より)

熱中症(筋肉のけいれんや虚脱感、頭重感(頭痛)、失神、嘔吐など)は「処置が遅れると死に至る可能性がある」ので、運動する本人だけでなく、指導者や管理者も十分に注意しなければなりません。

熱中症は最悪のケースですが、スポーツ選手にとっては、水分の不足による運動能力の低下が問題です。

「一般的に体重の3%の水分が失われると、運動能力が低下するといわれています。暑い日には1時間で2〜3リットルの汗が出ることもあります。体重60kgの選手なら、3%は1.8kgですから、この時点ですでに赤信号です」(同書)

水分が失われることで、心臓や血管系の能力が低下し、心拍数が上昇します。また「上昇した体表面の温度を下げるために血液が体表面に集まる」こともあり、筋肉や臓器への血流が減少して運動能力を低下させるのです。乳酸値も早く上昇します。

かといって、大量の水を一気に飲むのも考えものです。
水(ドリンク類)の飲み過ぎで、胃のなかで液体がタプタプしている感じを経験している人は多いでしょう。胃腸に血液が集中してしまいます。

水分はこまめに何回かに分けて摂取したほうがよいのです。

「私たちが渇きを感じたときには、すでにかなりの水分が失われています。だから、その前に飲む必要があります」

暑い時期には、練習前から水分を補給するようにしましょう。



スポーツ生理学 『勝ちにいく スポーツ生理学』(からだ読本シリーズ)
著 者: 根本 勇
発 売: 山海堂
定 価: 1,680円(税込)

「スポーツにおけるコペルニクス的転回はあり得るか? 答えはイエス。これまで常識と考えられ実践されてきたトレーニングであっても、科学的な実証もなしに、むしろファッション感覚で導入され、何の疑問もはさまれることなく永年にわたって行われてきたものも少なくありません。そんなトレーニングのいくつかを本書で取り上げ、注意を喚起してきました」
(「おわりに」より)

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補足:
ネットで「水分補給 タイミング」というキーワードを入力して検索すると、関連のサイトが多数表示されます。いずれを見ても「のどが乾いた」と感じてからでは遅いと書かれています。

蛇足:
ネットで「冬練三九」を検索すると、中国語のサイトが多数表示されます。ざっと見渡してみると、「夏練〜」のほうが先に来る場合もあるようです。また、2行目が続けて書かれていることはほとんどないようです。
冬はスキーの練習をして、夏はサーフィンの練習をする、という意味ではありません。念のため。