ホメオパシー

2003.04.06.

Similia Similibus Curentur (似たものが似たものを癒す)

1810年、ドイツで『オルガノン』という医学書が出版され、ヨーロッパの医学界に大きな波紋を投げかけた。著者はサムエル・ハーネマン、当時既に著名な医師だった。
ハーネマンは従来の医学とはまったく異なる考え方をする新しい医学体系、ホメオパシーをうち立てた。「ホメオパシー」とは、ギリシャ語で「同種、類似」を意味するomeos と「病気、苦悩」を意味するpathos を組み合わせた言葉で、「病気に類似した結果を作り出すもの」を意味する。

『オルガノン』を発表する前のこと、ハーネマンは化学と医学の分野で確固たる名声を築きながら、いったん医師の職を捨てていた。「これ以上人を傷つける危険を冒したくない」というのがその理由だった。何の根拠も感じられない仮説に基づいて病人のために薬を処方するという仕事に耐えられなかったのだ。

しかし、ハーネマンは研究を放棄したのではなかった。
ロンドン大学の教授が著した『マテリア・メディカ』という治療薬の効能一覧を翻訳しているとき、それまでどんな医師もしたことがない行動を起こした。
『マテリア・メディカ』にはマラリアの治療に有効であるとして、キナ皮(キニーネの原料)について20ページもの記載があった。ハーネマンはこの説明に非常に不満を覚えたらしい。そして、なぜかハーネマンは自らキナ皮を服用したのだ。
その結果、ハーネマンは、マラリアの治療薬が健康な人間に対してマラリアそっくりの症状を引き起こすことを発見した。

ハーネマンは実験を続け、膨大な医学書を調査した。ハーネマンの新しい理論に共鳴する医師たちも実験に協力した。さまざまな薬を服用して、それがどのような症状をもたらすかを綿密に記録していった。

「健康な人に何らかの症状を引き起こす物質は、病気の人に現れる同様の症状を治す」

ハーネマンは自分以外にもホメオパシーの基本原則を発見していたと思われる人びとを挙げている。ハーネマンは、ラテン語・ギリシャ語・アラビア語・英語・フランス語に精通しており、広範囲な文献を読むことができた。
例えば、ヒポクラテスは2通りの治療方法があること、つまり類似物を用いる方法と反対物(症状を抑える物質)を用いる方法があることを述べている。

何年かの実験の後、ハーネマンは医師の仕事に復帰した。新しい治療、ホメオパシーを実践するために。

本書の著者ヴィソルカスは1932年生まれのギリシャ人で、40年以上にわたってホメオパシーの実践と教育に尽力してきた。その功績が認められ、1999年にはスウェーデン議会より医療部門における第2のノーベル賞(Right livelihood賞)を授与されている。

本書の後半で、ヴィソルカスは現代の医療を厳しく批判しているが、外科手術の進歩については高く評価している。ただ、ハイテクを駆使した手術の成功は現代の治療の一部であって、医学全体の進歩として考えてはいけないと警告している。
共産主義崩壊以前の東欧諸国は最高水準の医療ケアを誇っていたが、WHO(世界保健機構)の統計によれば、平均寿命は加盟国の中で最低水準だったという。なぜかといえば、「無関心な医者が処方した薬を際限なく服用できる患者が、平均寿命を低下させることになった」からだという。「薬の値段がとても安いか無料なので、患者は健康を増進できると信じこんで薬を大量に飲んでいたが、現実には健康が蝕まれていった」のだ。


本書の内容ではないが、雑誌「気の森(2002年秋号・No.32)」にホメオパシーのことが掲載されていたので一部を紹介する。
ホメオパシーは欧米、南米、インドなどで知られているが、特別に盛んな国というのはないらしい。
ただ、イギリスはホメオパシーの普及に力を入れており、5つの王立ホメオパシー病院がある。英国王室の人びとは5人の侍医をもつが、そのうちひとりは必ずホメオパス(ホメオパシーの医師)だという。
また、イギリスでは地域ごとに住民の「かかりつけ医(General Physician = GP)」が決められているが、現在、GPが日常的にホメオパシー治療が行えるシステムを作ろうとしている。
フランスでは、レメディ(ホメオパシーの薬)を薬局で販売しているが、医師の処方箋を必要とすることが多い。フランスでも医師にホメオパシーを教えるカリキュラムが作られている。
ドイツでは国民の多くが代替医療の援助を希望しており、大学の医学部では代替医療の勉強をカリキュラムに組み込む例が多い。
日本でもホメオパシー医学会(理事長:帯津良一博士)が設立され、医師へのホメオパシー教育が行われている。

日本ホメオパシー医学会 [ http://www.jps-homeopathy.com/ ]



ホメオパシー 『ホメオパシー』
著 者: ジョージ・ヴィソルカス
訳 者: 白勢 京子
発 売: 国際語学社
定 価: 2,100円(税込)

「私の理論はいたって簡単です。もし現行の治療システムが本当に病気に効くものであれば、今頃は慢性疾患が減少しているか、撲滅されているはずです。しかし、現実には、そうでないばかりか、その全く逆のことが起きており、慢性病患者の数が爆発的に増えた上に、新たな退行性の慢性疾患が現れ、既存の疾患と肩を並べるようになりました。最近ではエイズがまさにその例です。
それでは実体的な医学の進歩とはどこにあるのでしょう?
医療全体としてこの問題を考えるなら、現在一般に行なわれている治療は残念ながら私たちの役に立っていないと認めざるを得ないでしょう。」
(「第15章 大いなる誤解」より、太字は原文のまま)

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