2.顔の傾き

先月か先々月、仕事の手を休めているときに何気なく自分の首筋に両手を当てて、漫然と骨を探ってみたのです。そうしたらこんなことに気がつきました。

両手の人差し指・中指・薬指をそろえて首の後ろ側、頭部と首の継ぎ目(頸椎の上のほう)に当てます。薬指が頭部の骨の最下部に当たり、左右の中指の先端が互いに触れない程度にします(結果として肘が前方を向き、親指が下側、小指が上側になっています)。その状態で顔を左右に傾ける(=顎を右左に動かす)と左右で合わせて6本の指に、頸椎の動きが感じられると思います。
頸椎の動きが感じられたら、いったん指を離し、顔をまっすぐに立ててからさっきと同じように指を当ててください。少し指先に圧力を加えてみたとき、左右の指は骨を感じますか。左の指に骨を感じますか。右はどうですか。頸椎はまっすぐですか。
私の場合は、左の指で骨の出っ張りを感じたのです。顔をわずかに左に傾けたら(=顎を右へ少しだけずらす感じ)、その出っ張りはなくなりました。つまり、頸椎がまっすぐになる顔のポジションと、自分でまっすぐだと思っていた顔のポジションとに食い違いがあったのです。

そういえば、写真屋さんで顔写真を撮ってもらうときに顔の向きを直すようによく言われました。自分の顔が傾いているらしい、ちゃんと正面を向いていないらしいということに気がついてはいたのです。ただ、正直なところあまり深くは考えていませんでした、、、
一応はいろいろ疑ってみました。自分の指が感じる頸椎のまっすぐと、自分が意識する顔のまっすぐとどちらが本当は正しいのだろうか、と。何を根拠にどちらを正とすべきか、、、
そこでもうひとつ思い出しました。自分の套路をビデオで見たら、雲手で左に回転するときに顔が右に傾いていたことを(ビデオで見たときにはむちゃくちゃ気になっていたのに、、、)。
やはり、自分は今まで顔を右に傾けていたようです。指で触りながら頸椎をまっすぐに調整すると、首の筋肉がリラックスしてくるのが明らかに感じられるのです。頭部の中まで、例えば鼻の奥のほうまで血行がよくなっているのがわかるのです。こんな大問題を今まで放っておいたとは、、、、(私の場合、自分がまっすぐと感じていた位置より、顔をやや左に傾け、左目のほうをやや前に出す感じでリラックスできるポジションになるようです)

アレクサンダー・テクニークの本『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』のほとんど先頭に書いてありました。「首の筋肉が解放されていれば、頭の中心は脊椎の上で美しくバランスをとります」「首の筋肉が硬いと、からだ全体が硬くなります。それはとても悪いことです。自由なのがよいのです」

今、日常生活の中で、稽古の中で、つとめて首の筋肉のリラックス状態を保てるように意識しています。今まで何年も(何十年も)傾けていた顔ですから、そう簡単には修正できないわけですが、首のリラックス状態の時間が少しでも長くなっていくようにと考えているこの頃です。(神経質に思われるほど気にしているわけではないですよ、念のため)
実を言うと、最初に左手の指で出っ張りを感じたときは、首にできものがある!と思ったのです。このコリコリしたものは何だろうと思いながら頭を動かしたら、何だ首の骨じゃないか、と気がついたわけです(やれやれ)。 2002.07.07.

『音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと』

著 者:
バーバラ・コナブル
訳 者:
片桐 ユズル・小野 ひとみ
出版社:
誠信書房
定 価:
2,100円(税込)

「ボディ・マップとは、白分のあたまのなかに自分がどのように描かれているかということです。ボディ・マップが正確ならば、動きがうまくいきます。ボディ・マップが不正確だったり不適切だったりすると、効率よく動けず、怪我をしたりします。ボディ・マッピングの過程では自己観察と自己探求により自分のボディ・マップを知ることを学習します。」
(同書「インフォ」より)


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