6.旧い習慣を捨てる

「癖や習慣を変えることほど、困難な作業はないように見受けられる。 (中略)人間は誰もが、行動でも思考でも個人的な習慣を持っている。 これらの習慣は、実は必ず「役割」を果たしている。しかし、その役割と 同じことを、もっと容易に果たしてくれる新しい習慣が見つかると、 それが変化のきっかけになる。(中略)逆に、代替の習慣がないと旧い 習慣を取り除くのは極度に困難な作業になる(中略)。こうした努力は、 人間の限界を超える。だから、ほとんどのプレーヤーは新しい努力を 途中で放棄し、安全な旧い習慣に舞い戻る」

『新インナーゲーム』という本は、集中力(Concentration)を高め、 自身の本来の能力を最大限に引き出すためのあれこれを教えてくれる本です。 テニスを題材にした本ですが、テニス以外のことにも役立つはずです。
上記は同書第6章からの引用ですが、ある習慣をやめると考えるのではなく、 「代わりの習慣を身につけよう」という考え方がいいと思ったのです。
長年同じことを練習していると、自分の動きの癖に気がつくようになります。 自分で気がつくこともあれば、複数の別人から同じことを指摘されて気がつく こともあるでしょう。
そして、動きの癖をなくすのは難しいことです。自分では注意している つもりが、また同じことを指摘されます。「そんなばかな」と言いいたく なりますが、鏡を見たり、ビデオで見たりすると、直したつもり(少なくとも 以前よりはましになっていたはず)の癖が見事に再現されています、、、
著者のガルウェイは、そのような癖があるからには、その癖は何らかの役割を 果たしているのだと考えました。好むと好まざるとに関わらず、その癖は 何かの役に立っているのです。何の意味もない癖ならすでに消えてなくなって いるはずなのです。 その癖が今どんな役割を果たしているのかを探りましょう。間違っているとか 悪いとかの判断を避け、ただ観察しましょう。そして、同じことがもっと楽に 行える代替品を見つけましょう。頭で判断するのではなく、自身の身体に聞いて みましょう。そうすれば著者の言うように「同じ役割を果たすベターな代替が 見つかる」はずです。

従来の「直し方」 インナーゲームの自修方法
ステップ1 自分のテニスを裁判にかけ、非難する。 今やっている習慣を判断せずに観察する。
ステップ2 自分に「直せ」と命じ、繰り返し「言葉」で自分にレッスンする。 望む結果の画像を思い浮かべる。
ステップ3 「正しい」打ち方で打たせるように頑張る。 いったん自身に何かをするように求めたら、あとは自由にそれをやらせる。
ステップ4 結果に対して辛辣な判断が下され、自分自身に対する「意地悪い悪循環」に入る。 観察と自習を続けさせるために、判断せず、静かな観察を続ける。

2002.09.16.

『新インナーゲーム』

著 者:
W・T・ガルウェイ
訳 者:
後藤 新弥
出版社:
日刊スポーツ出版社
定 価:
1,365円(税込)

「試合中も練習中も、ひっきりなしに自分に対して命令し、励まし、叱咤するもう一人の 自分がいることに、あなたは気づいているだろうか。
小うるさい上司のような「命令の専門家」は、自身のスポーツを妨害する張本人でもあった。
これは驚くべき発見だ。 (第2章の扉裏より)」


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