22.顔を解放する

今となってははっきりと思い出せませんが、確か3~4年前のこと、自分の顔にある特徴が現れていることに気がつきました。口の左端が引きつったように上につり上がっているのです。
一度このことに気がつくと、もう気になって気になってしかたがありません。そういう自分の顔が嫌なのですが、しかし、どうにもならないのです。いつから、そのような状態になっていたのかもわかりません。
(鏡を見るたびにガッカリしながらもそんなに落ち込まずに生活できる楽観性が私の取り柄らしいのですが、、、)

結局、顔の左半分に不必要な緊張が慢性的に存在していたことがわかりました。これに気がついてから、まだ1年も経っていません。
不思議でした。顔の右側はリラックスしているのに、左側だけが緊張しているのです。今でも、なぜ左側だったのかはわかりません。
(頭部の傾きかたは関係があるかもしれません。頭の傾きについては「2.顔の傾き」をご覧ください)

顔の左半分の緊張に気がついたらすぐにゆるめる、ということを日々繰り返しているうちに、口の左端のつり上がりが目立たなくなりました。まだ、完全には緊張が抜けきらず、残像のような感覚がときおり浮上してくるのですが。

「顔の皮膚の下に筋肉があって、そこに緊張がため込まれることを知って驚く人が多い。顔はたくさんの感覚器のある場所だ。それらの感覚器が、皮膚の向こう側の世界と情報をやりとりしている。自分の顔のホールディング・パターン(引用者注:緊張、抑制のパターンのこと)を理解し、それらを解放することを学ぶと、はっきりと力強く自己表現ができるようになり、以前にはなかったような経験をする」

眠るとき、必要以上の力で瞼(まぶた)を閉じていませんか?
眠るとき、舌を上顎(あご)に押しつけていることがありませんか?
食べ物を口に含んでいるわけでもないのに、奥歯を噛み締めていることがありませんか?

顔のどこかに緊張を感じたら、その部分がゆるむのをそっと待ってみましょう。
ほんの少しだけ頭を前後左右に傾けたり、下顎をかすかに上下させたりするのもいいかもしれません。

陸上短距離走のモーリス・グリーンはスタートラインに着くときに舌を出す癖があります。バスケットの名選手マイケル・ジョーダンは、プレー中によく舌を出します。
彼らは、舌を出すことで顎や首の緊張を解いているのだと思います。
私たちは職場で舌を出すわけにはいかないでしょうが、唇を閉じたまま下顎を左右に動かしたり、頭を前後左右にわずかに動かすだけでもリラックス効果があるように感じます。

例えば、鼻の緊張が解けると、呼吸が楽になります。
眼のまわりの筋肉がゆるむと、見ることが楽になります。
顎と口元が調整されると、歯ぎしりが止まります。
顔の緊張がゆるむことでどのような変化が現れるか、ぜひ探求してみてください。

「理想的には、睡眠中や瞑想中のような休息状態の顔は無表情なほうがいい。思考や感情が内側から湧き上がると、それは顔にあらわれる。そしてそれが完結されるとその表情は消え去り、ニュートラルの状態、休息の状態にもどる、というのが理想的だ」

ほとんど意識しないで作り笑いを続けたり、仮面みたいに「良い顔」を作りあげたりしていると、ある種の「硬さ」が首へと波及し、首の硬さが背中へと波及しということになって行きます。

肩や腕や脚部の緊張だけでなく、首から上の部分の緊張にも意識を向けてみましょう。 2005.11.20.

補足:
『ボディワイズ』は素晴らしい本です。
大切なことがいっぱい書いてありますよ。

蛇足:
上記に引用した第12章のタイトル「頭を空っぽにする」は、野口三千三先生がDVD(『アーカイブス-野口体操』)の中でおっしゃていた「脳がない」に符合するように感じました。

『ボディワイズ』

著 者:
ジョゼフ・ヘラー + ウィリアム・A・ヘンキン
訳 者:
古池 良太郎 + 杉 秀美
出版社:
春秋社
定 価:
2,625円(税込)

「頭が軽くなると、身体の他の部分について再発見できるようになる。とくに、第8章から第11章で述べてきた人体の深部(コア)に関する問題を新しい視点から見ることができるようになる。頭と骨盤という二つの極を、相反するものではなく補い合うものとして、対立ではなく調和として見ることができるようになるのだ」
(第12章「頭を空っぽにする」より)


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